近年、民泊物件の「投げ売り」が全国で急増しています。
なぜ売却が相次いでいるのか、価格相場はどのくらいか、購入時の注意点は?
この記事では、民泊物件の投げ売りに関する最新情報を初心者にもわかりやすく解説します。
今、なぜ民泊物件が「投げ売り」されているのか?

近年、民泊物件の売却が増えており、中には「投げ売り」と呼ばれる破格の価格で手放されるケースもあります。
この章では、投げ売りが増加する6つの代表的な理由を解説します。
1.営業制限・法改正で採算が取れない
民泊は法改正により営業日数が年間180日までに制限されており、思ったほどの収益が上げづらくなっています。
さらに、消防法や建築基準法の対応のために設備投資が必要となるケースも多く、運営コストがかさみます。
これにより「収入は制限されるのに支出は増える」という状態となり、採算が合わなくなった物件が手放される要因になっています。
2.民泊バブル崩壊と供給過多の影響
民泊ブームで一気に物件数が増えた結果、今では供給が需要を上回り、競争が激化しています。
特に駅から遠い物件や、観光地から離れたエリアの物件は稼働率が落ち、収益が低下しています。
「持っていれば儲かる」という時代は終わり、厳しい目で選別される時代に突入したことで、撤退を余儀なくされるオーナーが増えています。
3.宿泊単価の下落で利益が消えた
価格競争が激しくなり、宿泊単価が以前よりも2〜3割下落しています。
しかし、清掃費や管理費などの固定費は下がらないため、収益率は大きく圧迫されています。
その結果、稼働率が高くても利益が出ない物件が増え、採算を見込めず売却されるケースが多く見られるようになりました。
4.コロナ・円安などによるインバウンド不調
新型コロナウイルスの影響で外国人観光客が激減し、民泊需要は大きなダメージを受けました。
さらに円安や国際情勢の不安定さが重なり、インバウンドの回復は一部地域に限られたものとなっています。
特に外国人観光客に依存していた物件は、長期的な収益が見込めず、投げ売りされる要因となっています。
5.近隣トラブル・管理組合との摩擦
民泊物件は、不特定多数の宿泊者による騒音やゴミ出しなどで近隣住民とトラブルになることがあります。
特にマンションでは、管理組合が民泊禁止の規約を設けるケースも増えており、営業継続が難しくなることも。
住民トラブルや運営のストレスを嫌い、民泊事業から撤退するオーナーも少なくありません。
6.家賃やローン返済ができない投資家の撤退
民泊物件をローンで購入した投資家の中には、稼働率の低下によりローン返済が困難になっている人もいます。
収入が減っても毎月の返済や固定資産税、光熱費などの支出は変わらず、資金繰りが悪化。
赤字が続くことで、物件を現金化せざるを得ず、急いで売却=投げ売りという選択をすることになります。
投げ売り民泊物件の価格相場【エリア別・タイプ別】

民泊物件の「投げ売り価格」は、立地や物件タイプによって大きく異なります。
都市部・観光地・地方などで傾向はまったく異なり、築年数や構造、営業許可の有無によっても値段に差が出ます。
以下では、それぞれの特徴と相場の傾向を紹介します。
都市部(東京・大阪・京都)の価格傾向
都市部の民泊物件は、以前より2〜4割ほど価格が下落しています。
たとえば東京23区内のワンルーム物件は、以前は3,000万円前後だったものが、投げ売りでは2,000万円台で出回るケースも。
大阪・京都でも中心部の物件ほど価格維持傾向はあるものの、競争激化で安値取引が目立っています。
観光地(沖縄・北海道など)の値崩れ状況
観光地の民泊物件は、インバウンド不調の影響を受けて価格が大きく下落しています。
沖縄ではリゾートエリアの一棟物件が、通常の半額以下で売却されるケースも。
北海道ではスキーリゾート近郊などで二極化が進んでおり、立地と建物状態によって価格に大きな開きがあります。
地方都市・郊外エリアの値引き率
地方都市や郊外の民泊物件は、最大で50%以上の値引きが見られることもあります。
特に公共交通や観光インフラが整っていないエリアでは、需要が限定的なため売れにくく、価格を大幅に下げて売却する傾向があります。
一方、地方都市の中心部やビジネス需要があるエリアでは、一定の需要が残っているケースもあります。
物件タイプ別(区分・一棟・町家・戸建て)の相場
物件タイプによっても投げ売り価格は異なります。
区分マンションは1,000万〜1,500万円、一棟マンションや戸建ては2,000〜4,000万円程度が目安です。
町家などの古民家リノベーション物件は京都で人気ですが、収益性が落ちると大きく値下がりする傾向があります。
建物の状態や築年数も価格に大きく影響します。
投げ売り物件のメリット・デメリット

民泊物件を「投げ売り価格」で手に入れるのは魅力的ですが、同時にリスクも存在します。
この章では、購入側から見た投げ売り物件のメリットとデメリット、そして購入時に必ず押さえておくべき注意点を解説します。
メリット:低価格で参入できる・再生投資のチャンス
投げ売り物件の最大の魅力は、相場より大幅に安く購入できる点です。
初期投資が抑えられるため、民泊ビジネスに初めて参入する人にとってもチャンスがあります。
また、状態の悪い物件でもリノベーションで価値を高められれば、再生投資として高いリターンを狙うことも可能です。
デメリット:稼働率・法規制・修繕リスクが高い
価格が安い物件には、それなりの理由があります。
多くの場合、稼働率が低い、法令に適合していない、修繕が必要、というリスクを抱えています。
また、地域によっては民泊営業自体が禁止されていることもあり、購入後に運営できない可能性もあるため、慎重な確認が必要です。
注意点:なぜ安いのか?を徹底的に分析せよ
投げ売り物件は「安いからお得」とは限りません。
購入前に、「なぜ安くなっているのか?」を徹底的に調べることが大切です。
営業許可の有無、近隣トラブル、建物の老朽化、資金難による売却など、背景を正確に把握してこそ、後悔のない投資判断ができます。
民泊物件の「投げ売り」はどこで探せる?

民泊物件の投げ売り案件は、一般の不動産サイトでは見つけにくいこともあります。
しかし、いくつかの特化型サイトや専門業者を使えば、投げ売り中の物件情報を効率よく探すことが可能です。
ここでは、実際に利用されている代表的な4つの探し方をご紹介します。
1.M&Aプラットフォーム(TRANBI・バトンズ・民泊&)
事業ごと引き継げるM&Aプラットフォームでは、営業中の民泊物件が「事業譲渡」という形で出されています。
営業許可や運営実績がついたまま買えるため、初心者でもスタートしやすいのが魅力です。
特に以下の3サイトは民泊投資家に人気があります。
- TRANBI(トランビ):中小企業向けM&Aサイト。民泊案件も掲載。
- バトンズ:交渉・譲渡までワンストップで可能。物件情報が詳しい。
- 民泊&|民泊M&Aプラットフォーム:民泊に特化したM&Aサイト。営業中の民泊物件・運営権の譲渡情報が豊富。
2.不動産ポータルサイト(SUUMO・健美家など)
一般的な不動産ポータルでも、「投資用物件」や「民泊可」物件を探すことは可能です。
特に「価格改定」「即引き渡し」「訳あり物件」といったキーワードがついた物件は、投げ売りの可能性が高いです。
代表的なサイトは以下の通りです。
- SUUMO:全国の物件が掲載。条件絞り込み検索が便利。
- 健美家:投資家向け情報が多く、利回りなどもチェック可能。
- 楽待:収益物件に特化しており、掘り出し民泊案件が見つかることも。
3.民泊専門の仲介・コンサル会社
民泊運営に精通した専門業者を通じれば、表に出ない投げ売り案件を紹介してもらえることがあります。
これらの会社は、法規制や営業許可の有無なども含めてサポートしてくれるため、初めての人でも安心です。
「民泊&」や「日本総合政策ファンド」などが、民泊M&Aの仲介・支援を行っています。
4.地域密着の不動産業者・地場サイト
地方や観光地では、地元の不動産会社が独自に投げ売り案件を抱えていることもあります。
こうした業者は、地域事情に詳しく、用途変更や行政の対応状況などの実務にも精通しています。
特に観光地やリゾート地で物件を探す場合は、まず地元業者のサイトをチェックし、直接相談してみるのがおすすめです。
投げ売り物件を買うときにチェックすべき10のポイント

民泊物件を投げ売り価格で購入する際は、「安いから買う」ではなく、「収益が見込めるかどうか」を見極めることが大切です。
ここでは、購入時に絶対に確認しておきたい10のチェックポイントを紹介します。
1.過去の稼働率と収益実績
購入前に、その物件がどのくらい稼働していたかを必ず確認しましょう。
「稼働率」とは、1ヶ月や1年間でどれだけの日数が実際に宿泊予約で埋まっていたかを示す数値です。
同時に、月間売上や年間収益などの実績データがあれば、将来的な収益の見通しを立てやすくなります。
2.旅館業・住宅宿泊事業の許可状況
民泊営業を行うには、旅館業法または住宅宿泊事業法に基づく「営業許可」が必要です。
すでに許可が取れている物件かどうか、また営業継続に必要な手続きが済んでいるかを確認しましょう。
許可が失効していたり、名義変更が難しいケースもあるため、事前のチェックが不可欠です。
3.建築基準法・消防法の適合性
民泊物件は、建築基準法や消防法に適合していなければ営業できません。
たとえば、防火設備や非常口の確保など、宿泊施設としての安全性が問われます。
後から指摘されて改修費が発生するリスクを避けるためにも、購入前に専門家による確認をしておくと安心です。
4.管理組合のルールと近隣の雰囲気
マンションやアパートの場合は、管理組合の規約で「民泊禁止」とされているケースもあります。
また、近隣住民との関係性が悪化している物件は、クレームが絶えず、運営が困難になることも。
管理規約と、近隣の民泊に対する空気感の両方をチェックしておきましょう。
5.今後の修繕・リノベ費用
投げ売りされている物件は、老朽化や設備の劣化が進んでいることが多いです。
購入後にすぐ大規模な修繕が必要になれば、初期コストがかさみ、想定外の出費になります。
現地見学や専門家によるインスペクション(建物診断)を行うことで、修繕リスクを把握しておくと安心です。
6.自主管理 or 外注運営の体制
民泊の運営方法には、「自主管理」と「運営代行に委託」の2つがあります。
自分で管理するなら手間がかかりますが、コストは抑えられます。
一方、外注すれば手間は減りますが、管理費が必要。自分のライフスタイルや予算に合わせて、運営体制をあらかじめ決めておきましょう。
7.予約プラットフォームの評価・実績
AirbnbやBooking.comなどに掲載されていた場合、過去のレビューや宿泊数も確認しておくとよいでしょう。
高評価が多い物件は集客力があり、稼働率も高い傾向があります。
逆に評価が低い、レビューが荒れている物件は注意が必要です。購入後の運営が難航する可能性があります。
8.ローン・資金調達の可否
民泊物件は一般的な住宅ローンでは購入できないことが多く、投資用ローンや事業用ローンの審査が必要です。
金融機関によっては、民泊を事業とみなして融資を拒否することもあります。
事前に資金調達のルートを確認して、購入後の資金繰りに無理が出ないようにしましょう。
9.出口戦略(転用・転売)
民泊として運用が難しくなった場合、転売や賃貸への転用が可能かどうかを事前に検討しておきましょう。
特に立地がよければ、一般賃貸物件として貸し出すことも可能です。
購入前に「最悪のケースでも使い道があるか」を考えることで、リスクを最小限に抑えることができます。
10.営業継続に必要な条件の再確認
営業を継続するために必要な「地域の規制」「許可更新」「管理体制」などの条件を再確認しましょう。
特に自治体によっては、条例で営業日数が制限されていたり、独自の届け出制度があることもあります。
物件の所在地に応じて、継続的に営業できる体制が整っているか確認することが重要です。
民泊物件を売却したい人向けの選択肢と成功戦略

民泊運営に限界を感じて「もうやめたい」と考えている人も多いはずです。
ですが、焦って投げ売りしてしまうと、大きく損をしてしまうことも。
このセクションでは、民泊物件をできるだけ有利に売却するための選択肢や準備、交渉のコツを紹介します。
1.なぜ損切り売却になってしまうのか?
民泊物件が「損切り」状態で売られる主な理由は、収益性の低下と資金繰りの悪化です。
稼働率が落ちたり、ローン返済に苦しんだ結果、売却額が購入価格を大きく下回るケースも多く見られます。
また、規制強化や近隣トラブルなど、外部要因で営業継続が難しくなった場合も、早期売却を迫られる原因となります。
2.M&Aで「事業」として売るという選択肢
民泊物件は、単なる「不動産」ではなく「民泊事業」として売却する方法もあります。
M&Aプラットフォームを活用すれば、営業許可や収益実績を活かした状態で、次の運営者に引き継げます。
単なる物件売却よりも高く売れる可能性があり、特に営業中の物件は「事業譲渡」として売るのがおすすめです。
3.価格設定と交渉のコツ
投げ売りにならないためには、物件の収益力や稼働実績を根拠に、根拠ある価格設定を行うことが重要です。
交渉時には、「すぐに使える営業許可がある」「リピーターがいる」といった強みをアピールしましょう。
市場価格だけでなく、事業の価値を含めた価格で交渉するのが成功のポイントです。
4.売却前にしておくべき3つの準備
民泊物件をスムーズに売却するためには、以下の3つの準備をしておきましょう。
- 1. 収支実績の整理:月次収益・稼働率・費用などの記録をまとめておく
- 2. 営業許可の確認:名義変更の可否や有効期限を事前にチェック
- 3. 物件の清掃・写真準備:見た目の印象を整えておくことで売却成功率が上がる
これらを整えておくだけで、購入希望者からの信頼度が高まり、売却価格にもプラスの影響を与えます。
民泊物件の投げ売りに関するよくある質問(FAQ)
ここでは、投げ売りされている民泊物件に関して、多くの人が気になる質問をQ&A形式で解説します。
【結論】民泊物件の投げ売りは「情報戦と分析力」で差がつく
民泊物件の投げ売りには確かにチャンスがありますが、「安い=お得」とは限りません。
大切なのは、「なぜ安くなっているのか」を分析し、許可・収益性・修繕リスクなどを見極める力です。
買う側も売る側も、情報収集と冷静な判断が必要です。
迷ったら、不動産や民泊に詳しい専門家に相談し、後悔のない選択をしましょう。



