ハザードマップ区域の土地は売れない?理由と売却するコツを解説

ハザードマップ区域の土地は売れない?理由と売却するコツを解説

ハザードマップに指定された区域の土地には、「売れにくい」「価格が下がる」といった不安を抱きがちです。しかし実際には売却が可能なケースもあり、正しい知識と対策を取ることで買い手に安心感を与えることができます。そこで本記事では、ハザードマップ区域の土地が売れにくい理由や売却するコツなどを解説します。

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目次

ハザードマップとは?

ハザードマップとは?

ハザードマップとは、自然災害による被害のリスクが高い地域を示す地図です。土地選びや不動産売買の際に、重要な判断材料となります。特に近年では洪水や土砂災害などのリスクが明確に可視化されています。土地を買う人や売る人にとって、事前に確認しておきたい情報です。

ここでは、ハザードマップの目的や種類、リスク区域の見分け方解説します。

ハザードマップの目的と用途

ハザードマップの目的は、住民や土地所有者に対して自然災害の危険性を事前に知らせ、安全な避難や防災意識の向上を促すことです。たとえば洪水のハザードマップでは、川の氾濫時に浸水が予想される区域を色分けし、浸水深や避難場所まで明示されています。

  • 住民が「災害時にどこへ避難すべきか」「どのルートが安全か」を事前に把握できる
  • 不動産取引においても、購入者がリスクを認識しやすくなる

ハザードマップは災害時の命を守るだけではありません。不動産取引など土地や建物に関わる判断にも役立つ大切なツールです。

ハザードマップの種類

ハザードマップにはさまざまな種類があり、想定される災害の種類ごとに分かれています。代表的な種類は、次の通りです。

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ハザードマップの種類内容
洪水ハザードマップ河川の氾濫による浸水区域を示す
土砂災害ハザードマップがけ崩れや地すべり、土石流の危険区域を示す
津波ハザードマップ津波による浸水範囲や高さを示す
高潮ハザードマップ台風などによる高潮で浸水が想定される地域を示す
内水氾濫ハザードマップ下水道や排水設備の容量超過による浸水リスクを示す

土地購入や不動産取引の際には、事前にハザードマップを確認しておくことが重要です。目的に応じて複数のマップを照らし合わせることで、総合的なリスクを判断できます。

リスク区域の見分け方

ハザードマップでリスク区域を見分けるには、地図上の色分けや凡例を正確に読み取ることが大切です。色やマークの意味を正しく理解するようにしましょう。また現地の地形や災害履歴と合わせて確認することで、リスク区域をより正確に把握できます。

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ハザードマップの種類リスクの見分け方
洪水ハザードマップ河川の氾濫により浸水する地域をチェックする
土砂災害ハザードマップ土石流・地すべり・がけ崩れの警戒区域をチェックする
津波ハザードマップ津波到達の範囲・高さや避難場所をチェックする
高潮ハザードマップ台風や低気圧による海水の浸水範囲をチェックする
内水氾濫ハザードマップ各エリアの浸水深・雨水処理能力をチェックする

市区町村のWebサイトやパンフレットなどで公開されており、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」からも確認できます(※1)。物件の所在地を入力すれば、該当区域のリスク情報を一目で把握できるため、売却前のチェックにも便利です。

ハザードマップ区域の土地は本当に売れないのか?

ハザードマップ区域の土地は本当に売れないのか?

ハザードマップに該当する土地は「売れない」と思われがちですが、実際は状況によって異なります。買主の心理や自然災害の被災経験、住宅ローンの審査条件など、さまざまな要因が価格や売却期間に影響します。

ここでは、売却価格に影響しないケースや売却価格が下がるケースなどについて具体的に解説します。

買主が避ける理由と心理的ハードル

ハザードマップ区域の土地が敬遠される主な理由は、買主の「災害リスクに対する不安」です。特に洪水や土砂災害が想定される地域では、「浸水したら住めなくなるのでは?」「家財がダメになるのでは?」といった心理的な懸念が強く働きます。

  • 家族と安心して暮らせるかどうかは、購入検討者にとって重要である
  • 近年は災害報道が頻繁に取り上げられるため、防災意識が高まっている

内見時にハザードマップの内容がわかると、たとえ利便性が高くても購入を見送る購入検討者も存在します。買主は万が一の事態を想定してリスクを避ける傾向にあるため、結果的に売却のハードルとなります。

売却価格に影響しないケース

ハザードマップに該当していても、必ずしも売却価格に影響が出るわけではありません。以下のようなケースがあります。

  • 利便性が非常に高いエリア(駅近・商業施設が近いなど)
  • 防災インフラが整っている地域
  • 長年にわたり自然災害が発生していない土地
  • 高台に位置していて実質的な被害リスクが少ない土地
  • 耐水性・耐震性の高い新築やリフォーム済みの物件

リスクよりも利便性などのメリットを重視する買主にとっては、売却価格にあまり影響しないこともあります。ハザードマップに該当していても地域の特性や物件の状態次第では、相場に近い価格で売却できるケースもあるのです。

売却価格が下がるケース(自然災害の被害地域)

一方で、過去に自然被害が発生した地域の売却価格は下がりやすいです。特に近年の台風や豪雨によって浸水や土砂崩れが起きたエリアに対しては、買主の警戒心が一層強くなります。

  • インターネット上に、被災地域のデータが残る
  • 災害リスクは、価格交渉の材料にされる
  • 相場より2~3割安く取引されるケースもある

さらに被害があった土地には、建築基準法上の制限が加わることがあります(※2)。自由な建築が難しくなる点も、価格下落の要因です。災害リスクの「実績」がある土地は、心理的だけでなく実務的にも売却に不利となる場合があります。

金融機関の住宅ローン審査に与える影響

ハザードマップ区域の土地は、金融機関の住宅ローン審査においてもマイナス材料となることがあります。特に国や自治体が「災害危険区域」や「土砂災害特別警戒区域」として指定している土地に対しては、金融機関が融資に慎重になる傾向があるのです。

  • 担保評価が下がって融資額が減額されたり、ローン審査が通らないことがある
  • フラット35では、土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は融資対象外になっている(※3)

つまり買主にとっては、「買いたくてもローンが通らない」という現実的な障壁があります。結果的に、ハザードマップ区域の土地の売れにくさにつながるのです。

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ハザードマップに該当する土地を売却するコツ

ハザードマップに該当する土地を売却するコツ

ハザードマップに該当する土地でも、工夫次第でスムーズに売却できる可能性があります。リスクを減らす工夫や信頼できる業者選び、安心感を与える情報提供がポイントになります。

ここでは、売却を成功させるために実践すべき具体的なコツを5つご紹介します。

リフォームや土地整備で安全性をアピールする

物件や土地の安全性を強調するために、リフォームや土地の整備を行うことが有効です。

災害のリスクリフォームや土地整備の方法
洪水
基礎のかさ上げ
止水板の設置
外構の排水設備の強化
土砂災害擁壁の補強・新設
がけ下部分の補強
裏山の排水路整備
津波RC造(鉄筋コンクリート)の採用
避難タワーや屋上避難口の設置
高潮外壁や開口部の防水施工
地下空間への逆流防止設備
海抜の高い側への避難経路確保
内水氾濫雨水貯留槽の設置
敷地の傾斜や高さの調整

リフォームや土地整備を行うことで、購入希望者の不安を軽減でき、物件の魅力も高まります。多少の費用はかかりますが、安全性を示すことで売却が進めやすくなります。

信頼できる不動産会社に相談する

ハザードマップ区域の土地の売却には、一般的な土地と比べて専門的な知識が求められます。そのため経験豊富で信頼できる不動産会社に相談することが、成功への近道です。

  • 地域ごとの災害リスクや買主のニーズを理解している不動産会社を選ぶ
  • マイナス要素を踏まえて販売戦略を的確にアドバイスしてくれる

たとえば「水害のリスクはあるが、防災インフラが整っている」「過去に災害が起きていない」といった事実を客観的に説明することで、成約率を高めることができます。プロの視点を取り入れることで、売却が難しい土地でも対応策を検討できます。

相場と比較して適正価格を見直す

ハザードマップ区域の土地を売却するときは、適正な価格設定が重要です。市場価格のままでリスクがある土地を売りに出しても、なかなか買い手は付きません。以下の方法で、適正な売出価格を検討してください。

  • 周辺エリアの取引事例や相場を調査にする
  • 同じエリア内でハザードの非該当地と該当地の価格差を把握する
  • 「災害リスクがどの程度価格に反映されるのか」を客観的に見直す

市場を調査するときには、不動産ポータルサイトや国土交通省の不動産情報ライブラリなどが参考になります(※4)。買主に「割安感」を持ってもらえる価格設定は、売却を前向きに進めるための重要な要素です。

地域の開発計画や防災対策を調査する

売却を検討している土地の地域で、開発計画や防災インフラが進んでいるかを確認しましょう。こうした情報を買主に伝えることも、売却の成功につながります。たとえば以下のような情報を入手できれば、買主の不安を和らげる材料になります。

  • 都市計画による再開発で、将来的な資産価値の上昇を期待できる
  • 河川の護岸工事が予定されている
  • 土砂災害対策として砂防ダムの建設が進行している

市区町村の都市計画課や公式サイトなどで、開発計画や防災対策の情報を確認できます。物件の将来性も伝えることで、買主の安心感や前向きな気持ちを引き出せます。

買取専門業者や任意売却を検討する

売却がうまく進まない場合は、買取専門業者への売却や任意売却を検討するのも一つの方法です。

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不動産売却の方法メリットデメリット
売却(仲介)高値で売れる可能性がある
幅広い層にアプローチできる
売却まで時間が長くなる
内覧・交渉などの手間がかかる
買取スピーディーに現金化できる
内覧や広告活動が必要ない
相場より価格が下がる
選択肢が少ない
任意売却競売より高値で売れる
信用情報への影響を抑えられる
債権者の同意を得なくてはならない
債務整理として扱われる

最終手段として、上記の選択肢があることを知っておくと安心です。

ハザードマップ区域の土地売却によくある質問

ハザードマップ区域の土地売却によくある質問

ハザードマップ区域の土地を売却する際には、法律的な義務やリスク対策、賃貸との違いなど、さまざまな疑問が生じます。ここでは実際によく寄せられる質問について、わかりやすく丁寧に解説します。売却前の不安や疑問を解消することで、スムーズな取引につなげましょう。

Q 告知義務はある?

いいえ、ハザードマップに該当する事実には法的な告知義務がありません。しかし宅地建物取引業法では、売主や仲介業者には重要事項説明の義務が課せられています(※5)。買主が不利益を被るような事実を知りながら、伝えなかった場合は損害賠償の対象です。

  • 過去に浸水被害が発生していたことを知っていながら告げなかった場合
  • 「災害危険区域」に指定されていたにもかかわらず説明を怠った場合

上記のような場合には、トラブルに発展する可能性があります。そのためハザードマップのリスクを知っている場合は、トラブル防止のためにも誠実に説明することが大切です。

Q ハザードマップの指定は解除されることもある?

はい、ハザードマップの指定が将来的に解除される可能性はあります。しかし現実的には、非常に稀です。地形・過去の災害履歴・治水インフラの整備状況などをもとに、国や自治体が科学的根拠に基づいてハザードマップを作成しています。

新しい防災施設が建設されたり、土地改良が行われたとしても、リスクの完全な消失が確認されない限り、指定の解除は行われません。

  • 工事の進捗や新たなデータに基づいて、ハザードマップは更新される
  • ただし区域指定の変更には、時間と手続きがかかる

したがって今後のハザードマップの解除に期待して売却を待つよりも、現状のリスクを前提にした販売戦略を立てる方が現実的です。

Q ハザードマップの影響を受ける土地でも賃貸に出せる?

はい、ハザードマップ区域の土地や建物であっても、賃貸物件として活用することは可能です。ただし賃貸物件でも心理的な抵抗感を与えるため、賃料の設定や物件の設備に工夫が必要です。

以下のような工夫で、入居者に安心してもらうことができます。

  • 最新の防災対策を施していることをアピールする
  • 緊急時の避難マニュアルを整備する
  • 災害保険の加入を案内する
  • 家具の配置に関するアドバイスを提供する

賃貸物件の入居者を募集するときにも、借り手の立場に立った配慮が大切です。一定の需要があるエリアであれば、賃貸として安定した収益を得られる可能性があります。

Q 売却後に水害が発生したら、売主に責任はあるか?

いいえ、原則として売却後に発生した災害による損害について、売主が責任を問われることはありません。ただし売却時に重大な事実を隠していた場合や虚偽の説明を行っていた場合には、損害賠償や契約解除といったリスクが生じることがあります。

以下の点に気をつけて、売却活動を進めてください。

  • リスクを最小限に抑えるためにも、事実関係は誠実に伝える
  • 契約書にもハザードマップ該当区域である旨を明記しておく

たとえば過去に浸水の被害に遭った事実を知っていながら説明せずに売却してしまうと、買主が損害賠償を請求してくる可能性もあります。

Q 土地の査定で重視されるポイントは?

土地の査定においては、ハザードマップへの該当だけでなく、複数の観点が重視されます。代表的な要素は、周辺の売買事例や接道の状況、用途地域、地形や形状、ライフラインの整備状況などです。

ハザードマップに該当していても、他の要素も含めて総合的に評価額が決まります。

  • 日当たりや立地条件が良好であれば一定の評価を受ける
  • 人気エリアであれば、リスクを許容する買主もいる

一方で災害リスクが明確でも対策が講じられていない土地の査定額は、相場より下がることもあります。そのため土地のポテンシャルを理解し、必要に応じて改善しておくことが大切です。

まとめ:ハザードマップ区域の土地でも上手に売却しよう

まとめ:ハザードマップ区域の土地でも上手に売却しよう

ハザードマップに該当する土地でも、正しい情報開示と工夫次第で売却が可能です。災害のリスクを把握し適切な対策を講じることで、買主に安心感を与えて売却を進めましょう。

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※1参照元:国土交通省「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)

※2参照元:内閣府「過去に行われた建築規制と現在の建築基準法による措置」(https://www.bousai.go.jp/kaigirep/chousakai/tohokukyokun/6/pdf/4.pdf)

※3参照元:フラット35「【フラット35】2021年10月適用の【フラット35】S利用要件のご案内」(https://www.flat35.com/topics/topics_20210603.html)

※4参照元:国土交通省「不動産情報ライブラリ」(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)

※5参照元:国土交通省「重要事項説明・書面交付制度の概要」(7ページ)(https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001477450.pdf)

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