マンションの売却を検討する際にはまず不動産会社に査定を依頼し、価格の目安を知る必要がありますが、売却理由が離婚の場合は早めに依頼するのがおすすめです。
なぜなら離婚によってマンションを売却する場合は通常の売却にはないポイントや注意点があるからです。
そこで、この記事では離婚によってマンションを売却する際の査定ポイントと、売却時の注意点について解説します。
離婚でマンションを売却した場合、専業主婦でも財産分与されますか?
マンションの所有権が夫だとしても共有財産であれば財産分与を受けることは可能です。ただし、結婚前から保有しているマンションの場合は対象外となりますので、注意しましょう。
そうなんですね。ところでマンションを売却する時は、査定は必須ですか?
査定を受けることで売却価格の目安を知ることができます。また、査定額や提案内容を不動産会社選びの判断材料にすることもできます。
そのため、査定は必ず依頼しましょう。
離婚でマンションの査定が必要となる理由は?
この章では離婚時にマンションの査定が必要となる理由について、解説します。
- 家を売却するためには査定が必須
- 財産分与で権利を分割する必要がある
家を売却するためには査定が必須
マンションの売却価格が高いほど手残り額は増え、財産分与の額も増えます。
しかし、相場よりも高い売却価格に設定してしまうと販売が長期化し、いつまで経っても財産分与できない状態が続いてしまうでしょう。
さらに、住宅ローンがある場合は売却完了まで返済を継続することになり、その分の資産は減り続けます。
そのため、マンションを売却する際にはまず査定を不動産会社に依頼し、目安となる査定額提示を受けることが重要です。
また、査定依頼は査定額の提示だけでなく諸費用や税金の目安も教えてもらうことができ、住宅ローン残債の抹消を考慮した手残り額のイメージをつけることができます。
このような理由から、不動産会社に早い段階で査定を依頼する必要があるといえるでしょう。
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財産分与で権利を分割する必要がある
離婚時には財産分与をする必要がありますが、マンションが「婚姻中に共同して形成した財産」にあたる場合は財産分与の対象となります。
また、不動産は財産分与のなかでも割合が大きく、資産価値を把握しなければ適切に財産分与をすることが難しくなるでしょう。
このような理由から、離婚時にマンションを保有している場合は査定を依頼する必要があります。
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離婚でマンションの査定を急いだほうがいいケース
離婚時にマンションの査定が必要となる理由について解説しましたが、査定の依頼は急いだ方がいいケースがあります。
この章で詳しく解説しますので、参考にしてください。
- どちらかが住み続ける
- マンションが夫婦の共同名義
- 片方に賠償金を支払う
どちらかが住み続ける
マンションを売却せずにどちらかが住み続ける場合は「所有権移転」するのか「居住権」だけ付与するのかで財産分与の内容は大きく変わります。
たとえば所有権が夫でそのまま夫が住み続ける場合、マンションの価値に対して半分の資産を妻に渡すことになります。
一方、妻がマンションに住み続ける場合で所有権を妻に移転させた場合、夫に資産を渡すことになります。
ただし、所有権移転せずに妻が住み続ける場合は居住権に対する分与の取り決めが必要となります。
このように離婚時にどちらかがマンションに住み続ける選択をした場合は財産分与の内容が複雑化する傾向にあり、正しく財産分与するためにもマンションの価値をなるべく査定によって把握する必要があります。
なお、財産分与には4つの種類があり、以下のような特徴があります。
清算的財産分与 | 一般的な財産分与。土地や建物、マンション、貯金などで婚姻生活中に築き上げた財産を1/2で分ける方法となる。 |
扶養的財産分与 | 「毎月3万円、3年間支払う」など、離婚によってどちらかの生活が苦しくなる場合に一定の生活水準が維持できるまでフォローする財産分与の方法。 |
慰謝料的財産分与 | 金銭ではなく、土地や建物で支払う慰謝料のこと。 |
過去の婚姻費用の清算 | 生活費の未払いなどを財産分与する方法。 |
上記のように、財産分与といっても様々な方法があり離婚時にはこれらの方法から選択する必要があります。
たとえばマンションにどちらから住み続けるケースであれば、扶養的財産分与となるでしょう。
その後生活が安定しマンションから退去した場合は売却することで清算的財産分与となりますが、それまでに居住した分は既に分与されていると見なされるため、きれいに1/2とはなりません。
このことからも、離婚時のマンションをどのように取り扱うのがベストなのかを離婚に強い不動産会社に相談するのがおすすめだといえます。
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マンションが夫婦の共同名義
マンションの名義が夫婦で共有名義の場合、売却するには2人とも合意する必要があります。
また、どちらかに所有権を一本化し、それをもって財産分与とすることもできますが、どちらを選択したとしても夫婦でしっかり協議する時間が必要です。
こういった話し合いは、長期化するにつれてコミュニケーションが取り辛くなり、その結果マンションが長期間放置されるケースもあります。
このような状態になるとマンションは経年劣化により価値が減少し、売却できる状況になったとしても当初の査定額よりも大きく下がるでしょう。
そのため、なるべく早い段階で不動産会社に査定を依頼し、マンションの取扱いを協議しましょう。
片方に賠償金を支払う
マンションの名義がどちらかの単有、もしくは共同名義で持分が1/2づつではない場合、片方に賠償金を支払う財産分与が一般的です。
この場合であってもやはりマンションの資産価値を把握しなければ適切に財産分与ができないため、早めに査定の依頼をしましょう。
たとえば、査定の結果、マンションの価値が3,000万円だった場合、夫が単有であれば1,500万円の金銭もしくはそれに代わる財産を妻に渡すことで財産分与となります。
また、共同名義で夫が6割を受け取り、妻が4割を受け取る場合は価値が1,800万円:1,200万円となり、夫から妻へ300万円を渡すことになります。
このように、マンションの価値が明確になることで財産分与をスムーズに進めることができます。
離婚時にマンションの査定を急ぐ理由はなんでしょうか?
離婚時は夫婦のコミュニケーションが時間が経つにつれ取りにくくなり、その間マンションの資産価値は下がり続けます。
また、管理修繕費の支払いなどの維持費もかかってしまい、その分の資産も減ってしまいます。
このような状況にならないためにもなるべく早くに査定を依頼し、査定額をベースとした財産分与の協議が必要となるからです。
分かりました。ところでマンションが夫婦の共同名義やペアローンの場合は何が必要ですか?
マンションが単有ではない場合、所有権を一本化するのか賠償金によって財産分与するのかを決める必要があります。
また、銀行担当者への連絡も必要でしょう。
どちらにしろ、査定による資産価値の把握は一番最初にしないといけないですね。
離婚でマンションの価値を査定する方法
離婚時のマンション査定は通常の査定とは違う点があります。
この章では離婚でマンションの価値を査定する方法について、解説します。
- 不動産会社の査定
- 不動産鑑定士による鑑定
不動産会社の査定
離婚が原因ではないマンション売却であっても不動産会社の査定は利用しますが、離婚時は必ず「訪問査定」を選択しましょう。
不動産会社の査定は「机上査定」と「訪問査定」があり、どちらも無料です。
机上査定は担当者がマンションに訪問せず資料ベースで査定額を算出する方法ですが、査定額の回答スピードが早いというメリットがある一方で査定精度が低くなるというデメリットがあります。
その点、訪問査定はマンションの家屋内を担当者がしっかり確認することで高精度な査定額の提示を受けることができ、さらにはマンションの財産分与方法についてアドバイスを受けることができるでしょう。
このような理由から、離婚時のマンション査定を不動産会社に依頼する場合は「訪問査定」を選びましょう。
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不動産鑑定士による鑑定
不動産会社への査定とは違い不動産鑑定士による鑑定は有料となり、20~30万円が相場です。
不動産鑑定士は独占業務となっており、「鑑定」と名のつく業務を実施することができる資格です。
鑑定は査定よりも高度な専門知識とデータを使った作業となり、不動産鑑定士は報告書という形式で鑑定額を提出します。
この報告書は離婚協議が難航し調停や裁判になった際の提出物としても有効です。
このことからも、マンションの価値をより正確に知りたい人には不動産鑑定がおすすめといえるでしょう。
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離婚でマンションを売却するメリット・デメリット
離婚時にマンションの売却を決めるケースはありますが、メリットもデメリットもあります。
そこで、マンションの売却を検討する際にはこの章で解説するポイントを参考にしましょう。
- 離婚でマンションを売却するメリット
- 離婚でマンションを売却するデメリット
- 離婚の際にはマンションを売却するのがおすすめ
離婚でマンションを売却するメリット
マンションは財産分与の資産割合が大きいため、売却して換金し財産分与するのが最もトラブルが少ないです。
また、片方がマンションに住み続ける場合だと近くを通るだけでストレスを感じる場合もありますが、売却したのであればその心配もないでしょう。
このように、財産分与がしやすく新生活を気持ちよくスタートできるのが離婚時にマンション売却を選択するメリットです。
離婚でマンションを売却するデメリット
離婚は当事者だけでなく、子どもや親といった家族にも大きな影響を与えてしまいます。
そして、離婚が原因でマンションを売却した場合は住んでいる家族全員の環境が大きく変わってしまい、特に子どもは転校を余儀なくされることもあるでしょう。
また、引っ越しや生活環境を変えるためのコストもかかってしまい、新しい生活環境を整えるまでが大変という点も大きなデメリットといえます。
このように、離婚でマンションを売却する場合は家族全員でしっかり話し合いをする必要があります。
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離婚の際にはマンションを売却するのがおすすめ
離婚の際にマンションを売却することにはメリットとデメリットがありますが、売却する方がおすすめです。
なぜなら離婚時に発生する財産分与の協議をスムーズにすることができ、ストレスを減らすことができるからです。
一方、マンションを売却しないまま財産分与の協議をした場合、資産価値の正当性で揉める可能性があります。
たとえばマンションが再開発エリアに建っている場合、数年後に価値が上昇することもあります。
財産分与の期限は2年間ですので、期間内でマンションの価値が変化すると再協議となるケースもあるでしょう。
このようなトラブルを回避するためにも、離婚時はやはりマンションを売却するのがよいでしょう。
離婚時にマンションを売却することには、どのようなメリットがありますか?
一番のメリットは財産分与の協議が簡単になるという点です。マンションの維持管理費や居住中の資産計算といった複雑な計算をしなくてすみます。
分かりました。でもマンションを売却してしまうと引っ越ししないといけないですよね?引っ越しにはどのようなメリット・デメリットがありますか?
引っ越しすることで新しい生活を心機一転スタートできるというメリットがあります。ただし、コストがかかってしまうという点はデメリットといえるでしょう。
離婚時にマンションを査定する際の注意点
離婚時にはなるべく早い段階で不動産会社に査定を依頼するのがおすすめですが、注意点もあります。
この章で解説する注意点はスムーズに査定依頼するために必要なポイントでもあるため、事前にチェックしましょう。
- 売却時には名義人双方の同意が必要
- 事前に相場を理解しておく
- 査定結果について質問をする
【査定は〇〇で差がつく!】マンションを高く売却するためにはコレが重要
売却時には名義人双方の同意が必要
共有名義のマンションを売却する場合は双方の合意が必要ですが、査定時においても合意を得ておきましょう。
査定自体は持分の権利で依頼できますが、相手が知らない状態で訪問査定を受けるとトラブルになる可能性があり、「不動産会社を結託して査定額を高く(安く)しているのでは」と疑われることにもなりかねません。
このようなトラブルを避けるためにも、査定は必ず双方の合意をもって依頼しましょう。
事前に相場を理解しておく
通常のマンション売却にも共通する注意点ですが、事前に相場を理解しておくことは重要です。
REINS Market InformationやSUUMOの相場ページでは成約事例と公開されているマンション情報を確認することができ、不動産会社に依頼する前であってもある程度の相場を把握することが可能です。
また、事前に相場を理解することで不動産会社から提示される査定額を精査することもできるため、相場の事前把握はおすすめです。
なお、査定を受ける際には次に挙げる書類が必要になります。慌てて用意することがないように事前準備しておきましょう。
- 登記識別情報通知(権利証)
- 購入時の売買契約書
- 購入時の領収書
- 管理規約
- 使用細則類
- 借入残高証明書
- リフォーム内容が分かる書類
参考サイト:REINS Market Information
参考サイト:【SUUMO】全国のマンション売却価格相場を調べる
マンションの価格を知りたいならコレ!無料査定サイトの使い方を徹底解説
査定結果について質問をする
査定は必ず複数の不動産会社に依頼するのがおすすめですが、全ての不動産会社に必ず質問をしましょう。
査定はただ査定額の提示を受けるだけではなく、不動産会社を選ぶ判断材料集めの場でもあります。
そのため必ず査定額の根拠を確認し、マンション売却や離婚に関する疑問点を必ず質問することが重要です。
質問の回答で離婚におけるマンション売却が得意かどうかが分かり、査定額の回答が分かりやすい会社は信頼できるといえます。
査定を受けることにはこのようなメリットがあるため、次に記載するような質問リストをあらかじめ用意しましょう。
- 査定額の根拠
- 売却完了までのスケジュール
- 売却価格の相場
- 手残り額のイメージ
- 販売時にオーナーとしてやるべきこと
- 売却後にオーナーとしてやるべきこと
- 財産分与の方法
離婚時のマンション査定に関するまとめ
離婚の際のマンション売却は財産分与をスムーズに進めるためにおすすめですが、そのためにもマンション売却に強い不動産会社に早い段階で相談するのが重要です。
そうすることで離婚協議とマンション売却のスケジュールを把握することができ、トラブルを未然に防ぐことができるでしょう。
査定を依頼する際の注意点はありますか?また離婚による売却は誰に相談すべきでしょうか。
査定を依頼する際には必ず双方の合意を取っておきましょう。片方が知らないまま訪問査定を受けた場合はトラブルになる可能性があるからです。
また、事前に自分で相場を把握することも査定額の精査という意味で大事ですね。
離婚が原因でマンションを売却する場合は販売方法がデリケートになるため、ノウハウが多い不動産会社に依頼することが重要です。
そのため、離婚による売却は不動産会社に相談し信頼できる不動産会社を選びましょう。
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滋野 陽造
執筆者
保有資格:宅地建物取引士 賃貸不動産経営管理士
経歴:早稲田大卒。マスコミ広報宣伝業務・大手メーカー等のWebディレクターを経て、不動産関連業に従事。法令に則しながら、時流や現状も踏まえた解説をします