中古マンションの価格の動向や過去の売買価格は、不動産会社に聞かなくてもネット環境とパソコンやスマートフォンなどがあれば、自分で簡単に調べられます。
ただし、それらの情報から価格変動の傾向や正確な相場価格を類推するためには、過去の売買価格をそのまま鵜呑みにせずに、その売買価格に至った取引時の状況も知っておくべきでしょう。
この記事では、マンションの過去の売買価格の調べ方から、売買価格に影響する取引時の状況や理由について詳しく解説しています。
これからマンションを売却する方なら、現在の中古マンション価格の推移や相場把握のための取引事例の使い方をご理解いただくと良いでしょう。
過去の売買価格を調べる方法は有料ですか?
ここでご紹介する方法は、全て無料で24時間いつでも会員登録なしに利用できます。
不動産会社に行かなくても、本当に自分だけで過去の売買価格や相場が調べられますか?
過去の売買価格は自分だけで調べられて相場価格の目安にできますが、現時点の正確な相場価格を把握するには不動産会社の意見を聞くべきです。
中古マンションの売却相場の動向
新築・中古マンション価格はこの10年上昇傾向にあり、平均築年数は徐々に古くなっています。
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不動産全体の価格は過去10年上昇傾向が続く
下表の不動産価格指数の動向によれば、マンション価格は2013年から顕著な上昇傾向にあり、2022年12月時点までは継続して上昇を続けていることが分かります。
引用:国土交通省 令和5年3月31日 Press Release
なお、不動産価格指数とは2010年の不動産価格指数の平均を100としたときの、毎月の不動産価格の動向を数値化した指数です。
2020年に表面化したコロナ禍においては若干の下落が見られるものの、その後はすぐに上昇に転じており、全国的に新築マンションの平均価格は6年連続で過去最高値を更新しています。
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中古マンションの平均築年数は上がり相対的価値が変動
下表によれば、首都圏の中古マンション市場の平均築年数は、売却する中古マンションと成約した中古マンションいずれも年々古くなってきています。
引用:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)|東日本不動産流通機構
また、首都圏の中古マンション市場における築年数ごとの構成比率は下表のとおりです。
築5〜20年までの中古マンションの割合が徐々に減り、築31年以上の中古マンションの割合が徐々に大きくなっています。
引用:築年数から見た首都圏の不動産流通市場(2021年)|東日本不動産流通機構
市場にある中古マンションの平均築年数が古くなるということは、築浅物件が持っている相対的な価値が上がると言い換えられます。
つまり、築20年までのマンションの供給割合が少なくなるため、マンション価格は安定して売却がますます有利になるといえるでしょう。
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新築マンションの価格高騰に中古マンションも追随
新築マンション価格は、特に顕著な首都圏と同様に、近畿圏でも軒並み上昇を続けています。
下のグラフによれば「新築マンションの平均価格」および「㎡単価」のいずれもが、小さな変動はあるものの上昇傾向にあるのが分かります。
引用:第1部 土地に関する動向|国土交通省
また、中古マンション市場の動向は下のグラフのとおりであり、首都圏も近畿圏も新築マンションと同様に上昇基調が続いています。
引用:第1部 土地に関する動向|国土交通省
令和3年の中古マンションの成約状況や対前年比率は下表のとおりです。
成約平均価格 | ・首都圏3,869万円(前年比7.5%増) ・近畿圏2,509万円(前年比7.4%増) |
成約件数 | ・首都圏39,812件(前年比11.1%増) ・近畿圏17,083件(前年比1.3%増) |
中古マンションが新築マンションの動向に追随する原因の一つとして、新築マンション価格の高騰により新築マンションの購入を諦めた顧客が、購入対象を中古マンションに変更したため中古マンション需要が増加したと考えられます。
マンション価格の上昇傾向は今後も続きますか?
過去10年は上昇傾向でしたがこれから先も続くかどうかは分からず、下落する可能性もあります。
2023年は中古マンションの売り時といえますか?
中古マンションの売り時を判断する条件の一つが「相場が上昇しているとき」ですので、少なくとも2023年の上半期は売り時といえるでしょう。
過去のマンション売買価格調査(1)自分でネットで調べる方法
過去のマンション売買価格は、不動産会社に聞かなくても今はネット環境とパソコンがあれば自分で調べられます。
以下にご紹介するサイトは「(公益財団法人)住宅流通機構」や「国土交通省」が運営しており、誰でも無料で24時間利用が可能です。
- 住宅流通機構:レインズ・マーケット・インフォメーション
- 国土交通省 :土地総合情報システム
いずれも実際に取引されたマンション価格が登録されたデータベースで、公的な機関が運営する安心感や信憑性があるため、詳細な売買価格を調査するうえで大変有用なサービスです。
なお、上記の2つのサイトの概要や使い方に関して解説した別の記事がありますので、併せてそちらもご参照ください。
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過去のマンション売買価格の利用に関する注意点
前述した「レインズ・マーケット・インフォメーション」や「土地総合情報システム」を使えば、実際に過去に売買された価格の情報が簡単に調べられます。
しかし、実際に成約した信頼できる事例ではあるものの、その取引事例が今の相場として見なせるのかどうかは、下記の点に注意して検証しなければなりません。
- まずは同じマンションの取引事例を検索して収集する
- 同じマンションの事例のなかから1年以内のものだけをピックアップする
- 最寄り駅・駅距離・築年数・間取り・面積が類似するライバルマンションへ検索対象を広げる
- 1年より古い同マンションの事例やライバルマンションへと検索対象を広げて収集する
同じマンションの取引事例はもっとも相場として参考にしたい価格ではあるものの、1年以上も前の取引では今の相場として見なすのが難しい場合も多々あります。
例えば中古マンションを購入する顧客は、その時点でライバルとなるマンションを同時期に何件も内見して、そのなかからもっとも条件の良いマンションを選びます。
つまり、1年以上も前の同マンションの取引事例よりも、取引時期が近くて条件が類似するライバルマンションを参考にしたほうが、正確な相場の把握に役立つ場合が多いのです。
過去のマンション売買価格調査(2)不動産会社へ聞く方法
パソコンなどを使っても過去のマンション売買価格が出てこない場合があり、出てきたとしても同時期の売買価格のはずなのに、価格に一貫性がない場合があります。
そのような場合には、マンションがあるエリアの不動産取引を見てきた複数の不動産会社に聞く方法も試してみましょう。
不動産会社なら、過去の売買価格が取引当時の相場と乖離しているのかどうか、また乖離の程度や乖離した要因について不動産のプロの目線で分析できます。
そして、不動産会社は自社独自のデータベースや「東京カンテイ」などの有料の価格分析ツールを使用していることもあり、詳細な根拠の提示が期待できます。
過去のマンション売買価格について、価格の数字からは読み取れない当時の内情を知るためには、やはり事情に詳しい複数の不動産会社に聞く方法がよいでしょう。
なお、売買価格が影響を受けて相場価格と乖離してしまう要因は、下記の場合が考えられます。
- 春の異動時期から外れた時期に売却している
- 売主が売却価格より売却スピードを優先している
- マンション内の劣化がひどいなど物件の質が低い
- マンションが売れ残り最後に投げ売り価格になった
- ライバル物件が多くて値下げ競争に巻き込まれた
それぞれの要因がどのようにして売買価格を左右するのかについて解説します。
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春の異動時期から外れた時期に売却している
マンションの売買価格が最も高額になるのは、春の異動に合わせて3月入居ができる時期の売却です。
春の移動に間に合う時期(少なくとも2月中旬に売買契約を終えて3月中旬に引き渡す)に売却されるマンションは、供給が多いものの需要も多いため、比較的高値でスピーディーに売買される傾向です。
一方で、春の異動時期を過ぎると一気に需要が減ってしまい、マンションの相場価格も値下がりします。
売主が売却価格より売却スピードを優先している
マンションの買い替えをする売主が先に購入物件を決めた場合や、さまざまな理由でマンションの現金化を急ぐ場合には、早く売るために相場以下の価格で手放すことが多くなります。
マンション内の劣化がひどいなど物件の質が低い
マンション内の劣化がひどい場合には、買主は入居前のリフォームが高額になることを想定するため、購入を申し込む際に希望価格を低く提示するかもしれません。
また、内見のわずかな時間だけではリフォーム金額を正確に把握できないので、買主が購入をためらう心理を想定して、売主側から安い売却金額を設定することもあります。
マンションが売れ残り最後に投げ売り価格になった
売れ残りのマンションには、何か原因があって売れ残っているのかもしれないとの悪いイメージがついてしまい、不動産会社からも買主からも心理的に避けられがちです。
また、売却中にライバルマンションが相場よりもかなり安い金額で売却された場合には、その取引事例が最新の相場価格に影響して、相場が値崩れを起こす可能性があります。
つまり、売れ残りのマンションを売り切るためには、マイナスイメージ払拭のためもしくは相場の値崩れなどの要因により、以前の相場よりも安い価格になる可能性が高くなるのです。
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ライバル物件が多くて値下げ競争に巻き込まれた
同時期にライバル物件が多いなら、先に売り抜けようとして自ずと安値競争になります。
相場よりも売却価格が下がるのは本望でないものの、売れ残ればその先でさらなる値崩れを起こす可能性があるため、大幅に値下げをしてでもその時期に売り切ったほうが良い場合もあるのです。
「レインズ・マーケット・インフォメーション」と「土地総合情報システム」とは何ですか?
「レインズ・マーケット・インフォメーション」は売却を仲介した不動産会社が不動産流通機構のシステムに登録した売買価格のデータベースで、「土地総合情報システム」は国土交通省がマンションの買主へ送ったアンケートの回答を元にした売買価格のデータベースです。
実際の売買価格が売却した時点の売却相場と異なる要因は何ですか?
売買価格に影響を及ぼす要因は、売却時期・売り急ぎ・マンションの劣化具合・ライバル物件の数などです。
中古マンションの過去の売買価格を調べるのが難しいケース
新築マンションの売買価格は「レインズ・マーケット・インフォメーション」や「土地総合情報システム」に過去の売買価格として掲載されていません。
というのも、新築マンションは専門の販売会社が売主(マンションデベロッパー)の代理として、新築マンションの売却を一手に引き受けて販売します。
つまり、新築マンションの販売は不動産会社が仲介することはなく、売主代理人から買主への直接取引であり、販売活動にレインズを使用しないため、レインズに登録されることもないのです。
また、国土交通省の「土地総合情報システム」は不動産を購入した買主への任意のアンケートの返答を集積したデータですが、新築マンションはアンケートの対象外となっています。
もしも中古マンションの新築購入時の価格を調べるなら、新築時のパンフレットを参考程度に参照するか、新築時に購入した方から教えてもらうしかないのです。
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マンションの売却相場の解釈で注意すべきこと
マンションの売却相場の解釈は、売買価格がどのような要因に影響されて決まったのかを知ることからはじめましょう。
約5%の乖離率を考慮して売り出し価格を判断する
マンションの売却相場を調べるなら、過去の売買価格を参照する以外にも、現在売り出し中のマンション価格を調べる方法があります。
しかし、売り出し中のマンションは今後の価格改定や購入申込時の値下げ交渉を見込んで高めに設定されており、成約価格との乖離幅は約5%(場合によっては約10%まで)といわれています。
したがって、不動産ポータルサイトに掲載されたマンションの売り出し価格は、成約価格より約5%高めに設定されていると理解したうえで参照しましょう。
全ての取引が履歴として登録されていない
下記の2つの場合には、過去の売買価格がレインズに登録されない場合があります。
- 一般媒介契約による仲介
- 売主から買主へ直接の売却
それぞれの場合について、理由を簡潔に解説します。
まず、一般媒介契約による仲介での売買は成約事例を登録する義務はなく(ただしレインズ利用ガイドラインでは一般媒介であっても成約事例は登録する努力義務があるとされる)、成約事例を登録しなくても特段のペナルティーはありません。
これについては、一般媒介による成約事例のほとんどが登録されるものの、なかには登録されない事例もあるという程度です。
次に、売主から知人などの買主へ直接売却する場合ですが、新築マンションの売買と同様にレインズを利用しない取引であるため、レインズには登録されません。
同じマンションの取引事例でも今の相場とは見なせない
同じマンションの過去の売買価格は、相場の把握や売り出し価格の設定においてかなり参考になるデータです。
しかし、レインズの取引事例からは取引時点の状況が分からないため、その売買価格を決める要因になった事情(時期・売り急ぎ・ライバルの数・劣化状況など)を汲み取って補正しなければ、相場として参考にできない場合があります。
また「土地総合情報システム」の元データは個人が回答するアンケート内容であり、不動産に詳しくない素人が取引の事実とは異なる回答をしている場合も考えられます。
いずれも確度の高い情報ではあるものの、価格には振れ幅があるものとして理解し、鵜呑みにはしないほうが良いでしょう。
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【まとめ】中古マンションを売却する際は相場の把握が不可欠
中古マンションの過去の売買価格は、ネット環境やパソコンなどがあれば、いくつかの無料サイトで検索するだけで簡単に情報が得られます。
しかし、取引の状況が反映された価格でありながらもその要因までは記録されていないため、過去の売買価格をそのまま相場として流用するのは勘違いの元となる場合があります。
また、過去10年のデータから察するに中古マンション価格は新築マンション価格と同様に上昇基調にありますが、いつ停滞もしくは下落に転じるかは分かりません。
もしもマンションを早期に売却したい、もしくは売れないマンションを売れる条件に変えたいなどの要望があれば、すぐに不動産会社に相談すると良いでしょう。
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また、宅建資格等の資格保有者である専任の「買取アドバイザー」が、税金・法律・売却価格の面で最適な売却を提案するので、納得のうえでスピーディーにマンションを売却可能です。
さらに、18年間の不動産買取で培った独自の販売網があるので、他社よりも平均して15%高値での売却を実現しています。
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不動産ポータルサイトに掲載されている売却価格を相場価格と見なせますか?
現在の売却価格は、今後の値下げを見込んで5〜10%高めに設定されているため、相場価格と見なすべきではありません。
マンションの買取価格は必ず相場よりも安くなりますか?
その時点の相場よりも安くなることが多いですが、売れ残った挙げ句に買い取り価格よりも値段を下げて売却する場合があります。売却を急ぐなら買取がよい選択になるでしよう。
柴田敏雄(しばたとしお)
執筆者
保有資格:宅地建物取引主任士、管理業務主任者
経歴:司法書士事務所に2年、大手不動産管理会社に5年、不動産賃貸・売買の仲介営業会社に7年間従事し不動産全般の幅広い経験を積む。また外資系金融機関に2年間従事し金融資産形成や相続税の節税アドバイスを提供。不動産や金融の現場で培った経験を元に不動産系の記事を執筆している。