マンションを売却したときに、翌年の税金がどのくらい掛かってくるのか心配になりませんか?
特に住民税は翌年度に課税されるため、その税額に驚くこともあるかもしれません。
そこでこの記事では翌年の税金が心配な方に住民税や所得税について解説します。
マンションを売却した場合、必ず住民税を支払わなければならないのですか?
不動産を売って得た利益を譲渡所得といいますが、譲渡所得が発生しない場合は、住民税を支払う必要はありません。譲渡所得は、マンションの売却金額だけでなく所有期間や取得に要した費用・売却に掛かった費用・特例などによって決まります。
マンションの売却の翌年にかかる税金は3種類
マンション売却で譲渡所得を得た場合、翌年に譲渡所得税を納めねばなりません。
譲渡所得税には、所得税と復興特別所得税・住民税の3種類があり、いずれも給与所得などとは分けて納税する分離課税方式をとっています。
譲渡所得は単なるマンションの売却代金ではなく、マンションの売買についてのさまざまな費用を経費として算入できます。
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所得税
所得税は、税金を納める時に自分で納税額を計算して支払う申告納税方式をとっています。
マンションを売却した翌年の2月16日~3月15日までに税務署に確定申告を行い、復興特別所得税と合わせて納付します。
なお給与所得税は申告の手続きが不要です。
復興特別所得税
復興特別所得税は、東日本大震災からの復興のための施策を行うために課せられる税金です。
平成25年1月1日~令和19年12月31日までの期間、所得税額の2.1%を所得税と併せて納付します。
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住民税
住民税は所得税の確定申告をすれば、別途申告する必要はなく所得税の確定申告の内容が市区町村に送付され、税額が決められます。
不動産を売却した翌年2/16~3/15までに所得税の確定申告を行い、4,5月頃に市区町村から住民税の納税通知書と納付書が送られてきます。
納税者は6月から翌年5月までに4期に分けて分割あるいは一括で納税します。
住民税の支払い方法は自治体により多少異なりますが、次のような場所で納税できます。
- 市区町村役場の納税課窓口
- 銀行窓口やコンビニ
- 口座振替
- モバイルバンキング
- クレジットカード
- キャッシュレスアプリ
譲渡所得税の税率
譲渡所得税の税率は、マンションを所有した期間により下表のように決まっています。
【譲渡所得税の税率】
所得の種類 | 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計 |
---|---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 5年以下 | 30.63%※ | 9% | 39.63% |
長期譲渡所得 | 5年超 | 15.315%※ | 5% | 20.32% |
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住民税は所得税とセットで計算される
住民税は、所得税とセットで算出されるため、通常自分では計算しません。
そのため不動産を売却した翌年に、いくら課税されるか不安になる人も多いのではないでしょうか。この章では所得税と住民税の計算方法について説明しましょう。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得税を算出するには、初めに譲渡所得を計算します。
譲渡所得は、マンションの売却金額から取得するにあたってかかった費用、および売却時にかかった費用を引いて計算します。
譲渡所得=売却価格-(取得費+譲渡費用)
次いで税率をかけて譲渡所得税を算出します。
譲渡所得税=譲渡所得×税率
取得費の計算
取得費とは、マンションを購入した際にかかった費用をいい、次のようなものがあります。
- マンションの購入代金※
- 仲介手数料
- 設備費
- 増改築費用
- 登録免許税
- 印紙税
- 不動産取得税
- 司法書士への報酬
- 住宅ローンの利子
※建物の価値は時間がたつにつれて減少するため、そのまま取得費になるわけではありません。
マンションの購入代金は、減価償却される費用分を差し引いた金額になります
減価償却費の計算
減価償却費とは、固定資産の購入金額を耐用年数に合わせて分割し、費用計上する会計処理をいいます。
マンションの減価償却費の計算式は次の通りです。
減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数
購入金額には、建物の金額以外に建物部分の仲介手数料や固定資産税清算金などを含みます。
償却率とは耐用年数に応じて減価償却していく割合のことで、経過年数はマンションの築年数ではなく、購入してから売却するまでの所有期間をいいます。
償却率や耐用年数は建物構造により下表のように定められています。また端数月が出た時は、6カ月以上は1年とし6カ月未満は切り捨てます。
【非業務用資産の耐用年数と償却率】
建物の構造 | 耐用年数 | 償却率 | |
---|---|---|---|
鉄骨鉄筋コンクリート造又は鉄筋コンクリート造 | 70年 | 0.015 | |
れんが造、石造又はブロック造 | 57年 | 0.018 | |
金属造 | 骨格材の肉厚4mm超 | 51年 | 0.02 |
骨格材の肉厚3mm超4mm以下 | 40年 | 0.025 | |
骨格材の肉厚3mm以下 | 28年 | 0.036 | |
木造又は合成樹脂造 | 33年 | 0.031 | |
木骨モルタル造 | 30年 | 0.034 |
父親から不動産を相続したのですが、いくらで購入したのかわかりません?
取得費がわからない場合には、譲渡価格の5%を取得費とします。たとえば売却した不動産が6,000万円であったとしたら、300万円を取得費として計算します。取得費がわからないと、高額の税金を納めなければならないことになりますね。
譲渡費用になるもの
譲渡費用とはマンションを売却した際にかかった費用をいい、次のようなものがあります。
- マンション売却に要した仲介手数料
- 印紙税で売主が負担したもの
土地の部分は減価償却費にできない
土地はいくら時間が経過しても、価値が減少することはありません。
そのため減価償却できるのは建物部分だけです。マンションを購入する際には、売買契約書などに建物と土地代金が記載されているのが一般的です。
記載されていない場合には、建物部分と土地部分の比率を調べ計算しなければなりません。
所得税と住民税のシミュレーション
所得税と住民税の算出方法について、シミュレーションしてみましょう。
住宅種別:鉄筋コンクリートマンション
売却価格:5,000万円
譲渡費用:153万円(仲介手数料150万円・印紙代3万円)
マンション購入金額:4,000万円(土地2,000万円・建物2,000万円)
経過年数:15年
次の順番にしたがって所得税と住民税を計算します。
- 減価償却費の算出
減価償却費=建物購入価額×0.9×償却率×経過年数なので
2,000×0.9×0.015×15=405万円 - 取得費の算出
取得費=土地購入価格+(建物購入価格-減価償却費)なので
2,000万円+(2,000万円-405万円)=3,595万円 - 譲渡所得を算出
譲渡所得=譲渡価格-(取得費-譲渡費用)なので
5,000万円-(3,595万円+153万円)=1,252万円 - 譲渡所得税額を算出
所得税=譲渡所得×税率(5年超の保有)
1,252万円×15%=187万8千円
復興特別所得税=所得税×税率
187万8千円×2.1%=3.94万円
(なお1,252万円×15.315%を掛けても同じ答えが得られます)
住民税=譲渡所得×税率
1,252万円×5%=62万6千円
譲渡所得税額は所得税+復興特別所得税+住民税なので
187万8千円+3万9千円+62万6千円=254.3千円
したがって翌年には254.3千円の譲渡所得税を納めなければなりません。
この例では、翌年250万円もの譲渡所得税を納めなければならないのですか?
実際はこれから説明する特例を利用すれば、税金を納めずに済みます。それではマンション売却で利用できる特例について説明しましょう。
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マンション売却で利用できる特例
マンションを売却する場合、一定の要件に合致すれば譲渡所得を抑えられます。
3,000万円の特別控除
3,000万円控除を利用すれば、マンションを売却したときの譲渡所得が、3,000万円までは課税対象から除外されます。
したがって先ほどの例では、所得が3,000万円以下のため税金を支払う必要はありません。
3,000万円の特別控除の適用を受けるためには、次のような要件を満たす必要があります。
- 自分が居住中の家を売却
- 居住中でない場合は、居住しなくなった日から3年後の12/31までに売却
- 売却した年の前年または前々年に同じ3000万円特別控除、または買換え特例や譲渡損失の繰越控除を利用していない
- 売却した家屋や敷地が、収用などによる特別控除など他の特例の適用を受けていない
- 災害によって滅失した建物の場合は、その土地に居住しなくなった日から3年目の年末までに売却する
- 売主と買主が、親兄弟・夫と妻など特別な関係でない
なお3000万円特別控除は、所有者1人1人が利用できるため、夫婦でマンションを共有している場合は、それぞれが控除を受けられます。
また3000万円特別控除を利用すると、マンションの買換えでは住宅ローン控除が利用できなくなるので注意が必要です。
所有期間10年超の軽減税率
マイホームを売ったときに、保有期間が10年超の場合は譲渡所得税を抑えられます。
この軽減税率は前述の3,000万円特別控除と併用ができ、6,000万円以下の譲渡所得税を14.21%に抑えられます。
これを表にして整理すると次のようになります。
【所有期間10年超の軽減税率】
所得税 | 住民税 | 合計 | |
---|---|---|---|
6,000万円以下の部分 | 10.21%※ | 4% | 14.21% |
6,000万円超の部分 | 15.315%※ | 5% | 20.315% |
この軽減税率を受けるためには、下記要件を満たす必要があります。
- 譲渡した年の1/1で住宅の保有期間が10年以上ある
- 親兄弟や夫と妻など特別な関係にある人に対しての売却ではない
- 自分が居住しているマイホームの売却
- 居住していない場合は、居住しなくなった日から3年後の12/31までに売却する
- 3,000万円の特別控除以外の特例を使っていない
- 過去3年間にこの特例を利用していない
この特例はマイホームであることが前提で、別荘などは認められない可能性があるため注意しましょう。
特定居住財産の買換えの特例
特定居住財産の買換えの特例とは、マイホームを買い替える際に一定の条件を満たせば、譲渡所得税を繰り延べられる制度です。
税金を納めるために資金を用意したり、金融機関から借り入れをせずに済みます。
しかしこれは納税の先送りであり、物件を売却する際には税金を納めなければなりません。
この特例を受けるためには、次のような要件を満たす必要があります。
- 自分が居住している家を売却する
- 居住していない場合は、居住しなくなった日から3年後の12/31までに売却する
- 譲渡した年の1/1現在で住宅の所有期間が10年以上ある
- 他の特例の適用を受けていない
- 売却代金が1億円以下である
- 買い換える建物の床面積が50平方メートル以上、土地の面積が500平方メートル以下である
- 親子や夫婦など特別な関係にある人に対しての売却ではない
- 買い換えるマイホームが取得の日から25年以内に建築されたものである
特例を利用する際に、ほかに気を付けなければならない点はあるでしょうか。
今まで紹介した特例がすべて併用できるわけではありません。併用可能な特例と併用できない特例があるので後ほど説明します。
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売却して損失が出た時に使える特例
マンションを売却して必ず利益が出るとは限りません。売却して損失が出た場合に税金を取り戻せる特例について解説しましょう。
譲渡損失の損益通算および繰越控除の特例
マンションを売却して損失が出た場合には、所得税や住民税がかかることはありません。
また給与所得などほかの所得があるときには、譲渡所得の赤字と相殺(損益通算)して全体の納税額を抑えられます。
さらに、マンションを売却した年だけでは譲渡損失を相殺しきれない場合には、翌年以降も所得から繰り越して差し引けます(繰越控除)。
繰越控除は、翌年から最長3年間繰り越して損失を控除できます。
譲渡損失の繰越控除には、買換えの場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除と買換えなくても利用できるタイプがあります。
居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算および繰越控除
この特例を利用するには、次の要件を満たさねばなりません。
売却する住宅の要件:
- 所有期間が5年超の自宅の売却で、居住しているか居住していない場合は居住しなくなった日から3年目の年末までに住宅を売却する
- 譲渡の年の1/1における所有期間が5年超
買換え先住宅の要件:
- 今まで住んでいた住宅を売却した年の前年1/1~翌年の12/31までに買換え先住宅を取得する
- 買換え先住宅を取得した年の翌年12/31までに入居するか、入居する見込みである
- 買換える住宅の床面積が50平方メートル以上である
- 買換える住宅は、ローンの返済期間10年以上ある
特例の適用除外:
- 合計所得金額が3000万円以内で超えた年は繰越控除を受けられない
- 敷地面積が500平方メートルを超える場合は、超えた部分の譲渡損失の金額は繰越控除の対象とはならない
- 所有期間10年超の場合の軽減税率の特例や3000万円特別控除・買換え特例を住宅を売った年と前々年に活用した場合使えません
- 住宅ローン控除とは併用が可能ですが、譲渡損失の繰越控除で所得がゼロになった年は住宅ローン控除の適用はありません
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算および繰越控除
特定居住用財産の譲渡損失の損益通算 および繰越控除は、住宅の買換えをしないケースでも活用できます。要件は、買換特例の譲渡損失の繰越控除とほぼ同じです。
ただし、敷地面積500平方メートル以下の部分のみという要件はありません。
下記にあげる条件が買換え特例とは異なります。
- 買換えは必要なく、賃貸住宅や実家などへの移転でも適用になる
- 売却するマイホームに10年以上の住宅ローンの残債がある
- マイホームの売却価格が住宅ローン残高より少ない
- なお譲渡損失の限度額は、住宅ローンの残債から売却金額を引いた額になります。
特例には併用できるものとできないものがある
譲渡益を得た場合、特例控除を併用できる特例とできないものがありますので注意しましょう。
3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例は併用できる
3,000万円特別控除と10年超所有軽減税率の特例は併用できますが、両方の要件を満たす必要があります。
10年超所有軽減税だけを利用するケースと、両方の特例を併用した場合とでは、納税額にどれほどの差が出るかシミュレーションしてみましょう。
所有期間:10年超
譲渡所得:7,000万円
10年超所有軽減税率だけ利用する場合には、6,000万円についてはて10.21%の所得税と4%の住民税がかかります。残りの1,000万円の部分については、所得税が15.315%、住民税は5%課税されます。
- はじめに6,000万円以下の部分について計算
6,000万円の部分は所得税が10.21%で住民税は4%
所得税:6,000万円×10.21%=612万6千円
住民税:6,000万円×4%=240万円
合計で852万6千円 - 次に残りの1,000万円の部分について計算
1,000万円についての部分は所得税が15.315%で住民税は5%のため
所得税:1,000万円×15.315%=153万15百円
住民税:1,000万円×5%=50万円
合計で203万15百円 - 6,000万円部分と1,000万円の部分の税額を合計
852万6千円+203万15百万円=1,055万15百円
10年超所有軽減税率だけ利用した場合、約1,055万円もの譲渡所得税がかかります。
- まず譲渡所得7,000万円から3,000万円を控除
7,000万円-3,000万円=4,000万円 - 4,000万円に対して譲渡所得税の計算
10年超所有軽減税率の特例を利用すると、4,000万円の部分は所得税10.21%、住民税4%
所得税:4,000万円×10.21%=408万4千円
住民税:4,000万円×4%=160万円 - 所得税と住民税を合計
408万4千円+160万円=568万4千円
10年超所有軽減税率だけ利用した場合と比べ、大きく節税できることがわかります
買換え特例には併用できない特例がある
買換え特例は、3,000万円特別控除および10年間超所有軽減税率の特例と併用できないため注意しましょう。
3,000万円特別控除との併用はできない
10年超保有のマンションを買い替える場合には、買換え特例と3,000万円特別控除のどちらも利用できる可能性があります。しかし両制度の併用はできません。したがってどちらを利用したほうが得になるのか、比較検討して選びましょう。
売却益が3,000万円までのケースでは、全額が非課税になるためこの制度を利用するべきです。特に夫婦共有名義のマンションは、一人が3,000万円ずつ合計で6,000万円まで控除ができるので、利用するメリットが大きいといえるでしょう。
3,000万円超の譲渡益を得た場合は、買換えの特例を選ぶ方法もあります。
買換えたマンションを売却せず所有し続ければ、譲渡所得税を納める必要はありません。
ただし、あくまでも課税の先送りであり、売却する場合には繰り延べた譲渡所得税も納めなければならないことを覚えておきましょう。
10年間超所有軽減税率の特例とも併用できない
買換え特例は、10年間超所有軽減税率の特例とも併用できません。新しいマンションに住み始めた年、およびその前後2年間の計5年間に10年間超所有軽減税率の特例を利用している場合は、買換え特例を適用できないため注意しましょう。
まとめ
マンションを売却して利益が出ると、譲渡所得税を納めなければなりません。
とくに、住民税は支払いのタイミングは翌年度になるため、事前に納税金額を予想して手元にお金を残すようにしましょう。
また、特例も利用できる可能性がありますので、どのように特例を利用したらよいか、シミュレーションしておくとよいでしょう。
ここまで話を聞くと、特例もあるため譲渡所得税を納めることに神経質になる必要もないように思えますが……。
そうですね。マンションを売って3,000万円超の売却益を得ることは、そうは多くはないでしょう。しかし念のため、シミュレーションしておくことは必要なことです。
マンションを売却する際にかかる税金を抑えるためには、高い金額でしかも特例をうまく利用して売却することが重要です。
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